近畿地域の中小・
中堅企業の海外展開に
係る実態調査

~企業の海外展開は、 国内に投資と雇用をもたらす~

概要

企業の海外直接投資残高は、2001年から2010年にかけて2.8倍に増加し、海外現地生産比率も一貫して増加しています。さらに2011年以降は円高・高い法人税率等の6重苦と言われる現在の経営環境下で、大企業の製造業を中心として、従来にも増して海外直接投資等の動きが加速しており、この動きは中小・中堅企業へも波及すると考えられています。

このような状況については全国を対象とした各種調査は実施されていますが、近畿地域を対象としたものや非製造業を対象としたものは少なく、近畿地域の製造業、非製造業の海外展開の実態を把握できているとは言い難い状況にあります。

そこで、近畿地域の中小・中堅企業に対し、海外展開に係るアンケート調査及びヒアリング調査を行い、近畿地域の中小・中堅企業の海外展開の現状及び今後を把握するとともに、海外展開と国内空洞化の関係性について調査いたしました。

内容

①海外展開に関するアンケート調査
1)製造業アンケート調査
近畿経済産業局国際事業課が実施の「関西の中小企業海外展開実態把握調査~関西とアジア新興国の戦略的経済交流促進のための調査~」(平成24年9月~10月実施、近畿地域に本社を有する製造業の中小・中堅企業5,573社に郵送配布、郵送回収。有効回収数1,504社。回収率27.0%)を活用した独自集計により、製造業における中小・中堅企業の海外展開の取組状況や国際分業の実態を明らかにしました。
2)非製造業アンケート調査
非製造業の中小・中堅企業を対象とするアンケート調査(平成24年10月~12月実施。近畿地域に本社を有する非製造業の中小・中堅企業3,003社に郵送配布、郵送・FAX回収。有効回収数945社。回収率31.6%)を行い、海外展開の取組状況や国に求める施策ニーズを明らかにしました。
②海外展開に関するヒアリング調査
1)製造業ヒアリング調査
製造業アンケート調査に協力が得られた企業及びアドバイザリーボードから推薦された企業の中から、海外展開に取組む製造業企業20社及び海外展開を実施していない企業5社を選定。海外と国内の事業戦略や国等に対する政策ニーズをヒアリングしました。
2)非製造業ヒアリング調査
非製造業アンケート調査に協力が得られた企業及びアドバイザリーボードから推薦を受けた企業の中から、海外展開に取組む非製造業企業10社を選定。海外と国内の事業戦略や国等に対する政策ニーズをヒアリングしました。
③アドバイザリーボードの設置と運営
学識経験者及び経済団体関係者等の中からアドバイザー6名を委嘱し、12月及び2月の2回開催。近畿地域の中小・中堅企業の海外展開の現状と今後や、近畿地域の中小・中堅企業の海外展開と国内空洞化の関係性について討議を行いました。

成果

●近畿地域の中小・中堅企業における海外展開の意義

本アンケート調査では、従業員数10名未満の小規模企業を調査対象から除外していることから、回答企業に占める海外展開の実績がある企業は47%、海外直接投資を実施している企業は22%に上るという高い結果となりました。
中小・中堅企業が海外直接投資を決断する際の目的は、国内市場が縮小する中、市場規模の大きさや成長性への期待感が中心です。当初は安価な労働力等を活用した生産拠点としての位置づけであっても、販売先(市場)としての比重を高める傾向にあります。
海外展開先としての実績や関心はアジアや欧米が多く、特に中国は15%の企業が直接投資をしていますが、国際情勢の影響などからタイやベトナム、中国内陸部などの「チャイナ・プラス・ワン」を検討する動きも見られます。

●近畿地域の中小・中堅企業の海外展開と国内空洞化の関係性

国内業績は厳しい見通しが大勢の中、海外直接投資を実施・検討している企業は国内業績も好調です。とりわけ海外売上高が拡大している企業ほど、国内売上高や国内従業員数も拡大する傾向にあり、「企業の海外展開は、国内に投資と雇用をもたらす」 ものです。
海外展開で獲得した利益についても、 国内への利益還元を優先する傾向が顕著であり、国内の厳しい経済環境の中で海外展開が国富の確保に貢献している様子が伺えます。

●政策課題に係る考察

中小製造業が海外事業を拡大するためには国内の企画・設計機能、生産技術改善機能等の充実が必要です。また、政策要望として国内の設備投資や研究開発に係る補助金等を求める意見もあります。さらに、中小企業同士の横関係を意識した連携・共同による海外進出支援に対する期待も大きくなっています。
また、海外展開の意欲や能力があっても、それに必要な人材の確保が進まない企業も多いため、海外で活躍できる中核人材の確保や育成も不可欠です。国際情勢の影響を受けやすい製造業のみならず、従来は内需型だった非製造業においても、海外市場への進出が進むと想定され、国内外で活躍できる人材育成に向けた施策が求められます。

データベース

業務名 平成24年度「近畿地域の中小・中堅企業の海外展開に係る実態調査」
発注者 近畿経済産業局企画課
担当者 高野、江藤

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図1 海外展開実績(MA, N=1504)

図2 海外直接投資の理由(MA, N=427)

図3 海外における事業展開の実績及び関心のある国(MA, N=1504)

図4 国内拠点/海外拠点の機能・役割(MA, N=182)

図5 海外売上高と国内売上高/国内従業者数の関係(SA)